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Live to tell 65


部屋を出ると同じように出かけようとするハラボジと出くわしてしまった。
お互いかける言葉を見つけられず気まずい空気が流れる。

と、
「おはようございます」
パタパタと駆け込んできたジャンディの明るい声が響く。

「朝から…」「何の用だ?」俺の怪訝な声にハラボジの助かったと言わんばかりの声が被る。

「一緒に出勤しようと思って」
嬉しそうにハラボジの手を取り、俺の袖を掴んで
「3人だから車で行きましょ」
「やれやれ…」言葉とは裏腹に嬉しそうなハラボジ。
「行きますよー。ほら早く早く」

結局有無を言わせず、俺も一緒に診療所に行くハメになっていた。

今日は「無料診療日」と言う事で診療所は人であふれかえっている。
お茶を配ったり、体温計を確認したりと独楽鼠のように動き回るジャンディ。
診療所の中ではしゃぎまわる子供たち。
待合室の片隅で黙って立っている俺にジャンディが“手伝え”と態度で示す。
…なんで俺が…
そう思った瞬間、「お兄さんお茶を」「こっちにもお願い」と声がかかる。
仕方なくお茶を持って行くと「綺麗な顔ねー」と口々に言われて、自分でも信じられない事だが、ぎこちなく愛想笑いをしていた。

騒ぐ子供たちを静かにさせたくて、子供が持っていたハーモニカを指差し「吹いてあげようか?」と訊いてみると、子供たちは期待に満ちた目で座り込み大人しくなった。
俺も床に胡坐をかくとハーモニカを吹き始めた。
子供だけでなく大人たちもお喋りを止めて聴き入ってくれている。

演奏が終わると全員が拍手してくれていた。
ジャンディを見ると彼女が親指を立てて笑ってくれた。俺もつられて笑顔になっていた。

忙しかった一日が終わり診療所の外は既に暗くなっていた。
「今日はありがとうございました。私のおかげで初めて経験したでしょ?」
こくりと頷き
「送るよ。乗って」
「いいえ、一人で帰ります」
診療所から出てきたハラボジと俺が再び気まずい空気を漂わせると、ジャンディはハラボジの診療鞄を持ち、「これ、すっごく重そう」と言いながら俺に持たせた。
そしてハラボジの腕を掴むと
「院長、帰りましょ」
「仕事が終わったらもう“ハラボジ”だ」
「気をつけてね、ハラボジ」
「ああ」

ハラボジを車に乗せたジャンディは黙ったまま俺に“早く乗れ”と身振りで合図する。
凝り固まっていた俺の心が少しずつ解れていくのを感じて笑顔になっていた。

運転席に乗り込んだ俺の耳に
「運転気をつけて!」
バックミラーに映るジャンディの朗らかな声が聞こえていた。

*

ハラボジとの生活が始まって最初の休日。
俺が釣りに出かける準備をしているとハラボジが自室から出てきた。
釣竿を点検する俺に
「冬は練り餌はダメだ。ミミズがいい」
そう言うと慌てて自室へと戻って行く。

再び部屋を出てきたハラボジは何も答えず黙々と作業を続ける俺の前に立つと釣竿を差し出してきた。
「良く使い込んである竿だ。さあ…」

俺が幼い頃釣りを始めたのは釣り好きのハラボジの影響だった。
―昔はよく一緒に行ったな…

言葉は自然に口をついていた…
「一緒に行きますか?」
驚いた表情で振り返るハラボジにどう対応すればいいか解らず、あわてて支度を進めながらようやく次の一言を発することができた。
「10分後に出ます」

先に車に乗り待っていると、ハラボジが急いで釣り道具を抱えてやって来た。
俺はだまって車を走らせた。ハラボジも黙っていた。

2018102116312268b.jpeg


桟橋に二人並んで椅子に座り釣り糸を垂らす。
顔を合わせもせず黙って水面を見つめていた。
やがてハラボジがポツリポツリと話し始める。

「メウンタン(海鮮鍋)はおまえの母さんの得意料理だった」
それでもハラボジを見ることなく前を見続ける俺に構う事無く先を続ける。

「今日は…あの子らの結婚記念日だ」
そしてハラボジはポケットから小箱を出して差し出した。
俺は手袋を外しその小箱を両手で受け取りそっと蓋を開けて見た。
中には指輪が一つ収められていた。

「今でも目に浮かぶ…お前の祖母の指輪をはめて嬉しそうに笑った彼女が…そんな古い指輪が嬉しいのかと尋ねたら…“世界でたった一つの指輪ですから”そう言ってな…」

ハラボジが語る母さんの姿が目に浮かび俺は耐え切れず嗚咽する…

「ジフ…すまない…大切な母親を私がお前から奪ってしまった…私の業が深いせいで…」

母さんが祖母から受け継いだ指輪を目にし、ハラボジの声を聴きながら俺の涙は止まることが無かった。



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