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Live to tell 61


陽も暮れ、ジャンディを診療所に送ってきた。

「今日もお世話になりっぱなし…」
「今日は俺も絵をもらった」
「中でお茶でもぞうぞ。緑茶だけど」

俺の逡巡を見て取った彼女。
「ハラボジ…院長先生はもう帰宅したから…」

彼女の気遣いが解りすぎる程解って、それ以上断る術を持たなかった俺は、軽く笑って頷いた。
すぐにお茶を淹れるから待っていてと、ジャンディがキッチンへと入って行く後姿を見送って、俺は診療所の中をゆっくりと見ていた。

待合室に飾られた写真立てに子供を連れた患者に対応する笑顔のハラボジの写真。その横に建てられたメッセージカードには “先生、ありがとう”と子供の字。
カードを戻し視線を上げるとそこにも壁に貼られた“先生、ありがとう”の子供からのメッセージカード。
子供たちに好かれているハラボジ…

俺もあの幼い頃、ハラボジが大好きだった…

診察室へと歩を進めると、机の上のカゴにいくつものロリポップキャンディが置かれている。…きっとここに来た子供たちにあげるんだろう…

そして……診察室の奥、窓際の棚に飾られた写真に俺の目は釘付けになる。
ハラボジの膝に座る幼い俺、そして両親とハルモニ…5人が写った家族写真…俺達家族が幸せだった頃の…
俺の心臓の拍動がうるさいほど激しくなる。
微かに震える手で、机に飾られた小さな写真立てを手に取ると、それはヴァイオリンを弾く幼い俺の姿だった。
ハラボジはどんな気持ちで毎日俺の写真を見ているんだろうか…

最後に俺の目に飛び込んできたのは…ハラボジの愛用の釣り道具入れだった。
幼い頃、俺が釣りに行きたいと強請る度に持って行っていたもの…どれほど忙しくても俺が釣りに行きたいと強請れば、すぐに連れて行ってくれていたハラボジ…

湧き上がる自分の感情が一体何なのか…俺には測り兼ねていた。

じっとそれに見入っていたその時、急にかけられた言葉…

「ジフ…」

この声は…ギクリとしてゆっくりと振り向いた先に、…泣き出しそうなハラボジがいた。

「失礼します」俺は感情を抑えその場を去ろうとしたが、取り縋るようにハラボジに行く手を阻まれていた。

「ジフ、儂が悪かった」
「……悪いのは俺でしょう……大切な息子夫婦を殺して、孫は生き残った…」

ハラボジを見ることなくそこまで言って、俺はハラボジをようやく見た。
「憎みますよね」

ハラボジは首を横に振り必死に否定する。
「お前は悪くない。儂の行いの所為だ。ジフ」

俺はハラボジを振り払い背を向けて、振り絞るように言葉を発する。

「その言葉…15年前のあの時に言って欲しかった。…解りますか?その子供がどれほどハラボジを待っていたか…」
「…ジフ…」
「解るはずないっ!その子がどれほどその胸で泣きたかったかっ!!」
「…私の孫よ…」

俺は振り絞るように叫んでいた。そしてハラボジは泣いていた…

もう一度ハラボジを振り返り真っ直ぐにその目を見て最後に俺は告げていた。

「二度と孫と呼ばないで下さい」


診療所を飛び出した俺は降り出した冷たい雨に打たれながら街を歩いていた。両親の葬儀の時を思い出しながら…
小高い丘の上にある墓地に両親を埋葬した帰りの坂道で、ハラボジを呼ぶ俺の目の前で、ハラボジは俺を見ることなく自分が乗った車を発進させた。ハラボジを呼びながら転び、泣き叫ぶ俺を振り返ることも無く、ハラボジは行ってしまった。
抱きしめて背を撫で『ジフ、大丈夫だ、儂がついているから』そう言って欲しかった…

どこをどう歩いたかも解らず、彷徨い歩いて家に帰りつくと、心配そうに俺を待っていたジャンディの姿があった。
彼女の姿を見た時、俺の中の張り詰めた糸が切れたかのように俺は意識を手放していた。



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