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Live to tell 9


両親が亡くなってからの俺は、勉強もスポーツもその他の後継者としての諸々についてもただ義務的にこなしていただけだった。
何にも関心が持てなかった。
だからと言って拒否することさえ煩わしかった。
黙って従っていれば周囲は俺に何も言わない、ただそれだけの理由。

ソヒョンが喜ぶからヴァイオリンを弾いていた。
ソヒョンが安心するから乗馬を続けていた。
ソヒョンに関してだけ俺の心が動いた。

親友たちはそんな俺の性格を良く解っていて必要以上に踏み込んでは来なかった。
たまにお節介が過ぎることはあっても、あいつ等なら許容できた。
でもそれは俺だけでなく…多分誰もが親友であっても踏み入れさせない部分を持っていたのかもしれない。


ともあれ、俺は言われる通りに淡々と短期留学をこなした。
親友たちも多かれ少なかれ似たようなものだったが、俺よりは前向きだっただろう。
夏季休暇以外は親友たちとつるんでいられる時間がまだまだあった。
敷かれたレールの先、いずれは会うこともままならなくなる時が来るだろうと、心のどこかでおぼろげに悟り諦めながら、それでもまだ実感が沸かなかった時代。


漫然と生きてはいても月日は流れる。
俺達は高等部へと上がった。
周囲の人間は生まれながらの家柄や財力を羨み、俺達を『望んで手に入らぬものは無い人間』と思っている。
でもその頃には俺たちも自らの環境が決して羨まれるようなものでない事を実感し始めた。
決められたレールの上を走り、期待に応えることが当たり前とみられる人生。

高等部に上がったその年、イジョンはビエンナーレに参加してユネスコ賞を受賞した。
あいつは一躍時の人となり、世間は『若き天才陶芸家』『ロダンの再来』と持て囃す。
親の後を継ぐためとはいえ、あいつなりに努力も精進もしてきた自負があったからか受傷自体は喜んではいたが、意外なほどに冷静だった。曰く…
『一回ぐらい賞を取ったからってその程度で満足してるわけにはいかないさ。まだまだ未熟だよ、俺は…』

幸か不幸か…この受賞がイジョンの運命を変えたのかも知れなかった。
イジョンの才能を目の当たりにした兄・イリョンが陶芸を断念し、家を出てしまった。
次男でありながらイジョンはソ家・次期当主となってしまったのだ。

*

<工房>

ガシャーン、ガチャ、ガシャーン、パリーン

陶器が床に落とされ割れる音。
それはあたかも心の悲鳴のようだった。

だがその人は冷静に表情を変えず、淡々と一つ一つ手にした陶器を落としていく。
そこに駆けこんで来たイジョンがその手を掴み制止する。
「どうしたんだ? 気でも狂ったのかよ?」
だが返ってきた答えは穏やかだった。
「いや、いたって正気だよ。気付いたんだ」
「何を? 何をだよ?」
必死に縋り付くような表情で訊ねるイジョン。
「憶えてるか? おじいさんが話していた窯の神」
「何の話だ?」

イリョンは軽く溜息を吐いた。
「窯の神が選んだ器は…俺じゃなくてお前だ」
兄から目を逸らせないままのイジョン。
「兄貴…」

イリョンはイジョンの手を取り話し続ける。
「この手…俺がどれほど欲しかったか…お前には分からないだろうな…?」
イジョンに笑いかけるその笑顔は、哀しみに満ちた諦めを纏っていた。
背を向け、その場を立ち去ろうとする兄に、
「それで? やめるのか… そんな風に独り出ていくのか…?」
弟の言葉には応えず再び歩き出したその背に
「逃げるつもりか? この家に俺だけを残して? 全部を押し付け一人で逃げるのか?」
イジョンの叫びが木霊した。



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